住宅の機能や性能は、時間と共に低下していきます。古くなった建物は壊し、新しい建物に建て替えるスクラップ&ビルド型の対応がとられることがほとんどでしたが、今は「いい物を作り、手入れして大切に使う」といったストック活用型に変わりつつあります。長く大切に使うことで、地球にやさしい、持続可能な社会の実現に繋がるといった「SDGs」の考え方が浸透してきているともいえます。
住宅のストック活用型とは、長期優良住宅が当たります。国の方でも、長期優良住宅を普及させるため、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が2008年(平成20年)12月に成立し、2009年(平成21年)6月に施行。
近年では、2019年(令和元年)2月に開かれた「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」において、長期優良住宅が既存住宅流通市場で評価される仕組みを検討する方針を示しています。これには、中古市場における住宅販売での差別化を図り、長期優良住宅の普及を促進する狙いがあります。
2009年から長期優良住宅の認定制度が始まりましたが、大手ハウスメーカーと中小工務店との間で差が見られます。
2016年(平成28年)に建てられた住宅をみてみると、年間50戸未満の中小工務店での長期優良住宅の認定はわずか12.6%。年間供給戸数が500戸以上の大手住宅会社では、61.1%の割合で長期優良住宅認定を受けています。
また、建物の構造にも違いが見られます。2011年から2017年の新築では、認定を受けているのは鉄骨造が8割近くとほとんどを占め、木造は2割弱とわずかです。
長期優良住宅の認定を推進させるには、中小工務店の意識改革がなければ厳しいと言う事がわかります。
長期優良住宅の認定を受けるには、以下の項目による条件を満たす必要があります。ちなみに、「バリアフリー性」「可変性」については、戸建て住宅への適応はありません。
住宅としての機能をできるだけ長く維持できることが、ストック活用型住宅では必須です。耐震等級2以上、大規模地震が発生した際に各階の安全限界変形に対する割合が1/40以下、免振建築物認定のいずれかをクリアしていなければいけません。
必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていなければいけません。省エネ法で規定されている省エネルギー基準に適合するため、省エネルギー対策等級4以上の認定が必要です。
快適な生活を維持するための清掃・点検・補修などが、建物にダメージを与えることなく実行できること。また、必要な工事が大掛かりにならないで済むようにされていること。維持管理対策等級3相当が必要です。
快適な居住水準の確保には、住民数に合わせた一定以上の住戸面積が確保されていなければいけません。二人世帯であれば75㎡以上、あるいは一つの階で床面積が40㎡以上。都市と地方では相対的な面積が違うため引き下げられることもありますが、下限は55㎡までです。
建物内部だけでなく、建物があるエリア全体に対しても配慮がされている事が必要。景観を壊さず騒音などの問題もなく、快適に生活できる環境をいいます。所管行政庁が審査しますが、担当庁によって基準が異なります。
劣化対策耐久3相当が条件。床下と小屋裏への点検口の設置、床下空間は330mm以上の高さを確保することは必要条件です。
経年劣化による点検・補修が実行できるように、構造体力上の主要部分、水の侵入を防ぐ部分、給水や排水設備に関しての維持保全計画を事前に作成・保存する必要があります。
長期優良住宅について多くの人が知るようになり、家づくりの相談の段階で口にする方も少なくありません。それというのも、SDGsの観点からだけでなく、長期優良住宅にすることは施主にとってメリットがあるからです。
・所得税の住宅ローン控除、登録免許税、不動産取得税、固定資産税など税制上の優遇
・地域型住宅グリーン化事業補助金(長寿命型)の利用
・地震保険料の割引
また、増改築においても支援されています。
・長期優良住宅化リフォーム推進事業
・所得税の住宅ローン控除、固定資産税の優遇
こうしたメリットからも、営業的にも勧めやすくなっています。長期優良住宅の有無で、集客効果も変わってくると言えます。
顧客の要望に応えるには、工務店自身も知識や技術のアップデートが必要です。「よくわからない」「手間がかかる」と長期優良住宅を避け続ける工務店では、今後の経営は難しいものとなるでしょう。長期優良住宅の普及は国が推進していることからも、受け入れないままでいるのは、経営危機にも陥りかねないものなのです。
自社で長期優良住宅の仕様を取り入れるのが難しい場合は、フランチャイズなどのノウハウ・工法を提供してくれる企業へ加盟することも賢い選択です。手取り足取りレクチャーしてくれるので、中小工務店でもすぐに取り入れることができます。サポート体制がしっかりしているところが多いのもポイントです。
先細りしていく住宅市場において、工務店・住宅会社が利益を確保するためには、何を武器に自社の強みを打ち出していくのか、他社とどう差別化していくのかを明確にし、施主にアピールすることが重要です。ここでは、工務店が加盟できる耐震性に優れた工法を提供している会社の中から、加盟店数が多かった支持されている3社を紹介します。